ファミマが販売予定のフォアグラ弁当が製造過程が「残酷」という声で発売中止になった。その報道を聞いて思ったのは「日本人が食べまくったせいで絶滅寸前」という不名誉な路線まっしぐらなニホンウナギはなぜ堂々と販売され続けているのか、ということだ。これは考えてみる意味があると思う。
#世界のウナギの7割は日本人が消費している
先日私のTweetが150回ほどRTされたようだ。もう少し丁寧に説明してみようと思う。各種報道によるとファミマが販売を中止したのはフォアグラが残酷だという声が22件寄せられ、ということになっている。「残酷」ならたった22件で止められるのに「絶滅危惧種」の販売は止められない。この違和感について。吉野家が昨年うな丼のCMを流していたのになんら社会問題にはならなかったでしょう?
フォアグラが「かわいそう」だけで中止になるなら絶滅危惧種のウナギはなぜ販売停止にならないのか。
— わいさかき (@ysakaki) 2014, 1月 24
事実関係としてはニホンウナギは2013年2月1日、環境省のレッドリストで絶滅危惧IB類に指定されている。IB類は「過去10年間あるいは3世代のどちらか長い期間において、少なくとも50%以上は成熟個体が減少していると推定される」という厳しい状況を意味している。また数年後にワシントン条約の規制対象になる可能性も取り沙汰されている。そうなったら稚魚の輸入に許可が必要になり養殖業者、蒲焼き屋は壊滅するだろう。ちなみに欧州ウナギが既にワシントン条約の規制対象になっているのは日本人が食べ過ぎて激減してしまったからなのでその前例を持つ日本人が「ニホンウナギは大丈夫です!これから保護します!」と言っても国際社会的には信用がない。
「アマミノクロウサギやライチョウ、イヌワシなどと同じランク」の絶滅危惧種をスーパーやら牛丼屋で売っていたらそれは絶滅するわな、という話であって数十年単位の禁漁をしても資源量が復活するか怪しい、という厳しい状況である。
話を戻そう。なぜフォアグラは簡単に販売に中止になったのにニホンウナギは販売中止にならなかったのか。
- 「感情」は「論理」より強い…のか?
- ニホンウナギが絶滅しかかっているということを知らない人が多い
- 自然保護団体・動物愛護団体などの力が弱い
- 抜本的には禁漁などが必要だが政府が無策である
「感情」は「論理」より強い…のか?
人から共感を呼ぶには、体を固定され強制給餌されるアヒルの絵の方がインパクトがある。それは事実だろう。スーパーや吉野家で大々的に売られている商品が実は絶滅して食えなくなります!と叫んでも一言では理解してもらえない。(今回のフォアグラの件は行き過ぎだろう、という話は置いておいて実際にその主張が通ったわけだ。)
ニホンウナギが絶滅しかかっているということを知らない人が多い
はてな界隈だとさすがにそういう人は少ないが「ウナギ高騰!」とは報じられても乱獲が原因だという報道が少ない。ニホンウナギではない海外品種を持ち込もうとする話を美談として報じていたりする。(そしてはてなでニホンウナギ食いつくしたら次に行こうってのは焼き畑だろ、とDisられる)
また「養殖」という語感から幾らでも増やせると思っているが実際は稚魚を取ってきて中国や日本で育てたものを出荷しているだけだ。親に卵を産ませて大人まで育てる、という技術(完全養殖)は実験室レベルでしか成功していない。
自然保護団体・動物愛護団体などの力が弱い
グリーンピースや毛皮反対運動、日本人にはお馴染みのイルカ漁にシーシェパード。欧米にはこうした組織があるがニホンウナギには販売中止を求めている有力団体が無い。団体があるということはバックに支援者が沢山いるということだ。吉野家だって国民から不買運動が起きるかも、という社会情勢だったらウナギのCMなんか打てないのである。
抜本的には禁漁などが必要だが政府が無策である
理想は禁漁したり漁獲高制限を設けてウナギ資源を自主管理することだった。業界関係者ができないのなら次は国が出なければならない。それには「一時的に収入が減るけれども長期的に見れば利益がある」と漁師や養殖業者や蒲焼き屋に説得する必要がある。誰もこれをやりたがらなかった。その結果ワシントン条約規制対象になり「日本人は資源管理できませんでした」と烙印を押される一歩前に追い込まれている。
J-CASTがまとまっているので紹介したが他でも色々資料が出ているので興味ある方は当ってみてください。
ニホンウナギについて、2013年3月に開かれたワシントン条約締約国会議では、議題にのらなかった。ただ、「米国内では会議の直前にウナギの規制が議題にのりましたし、欧州ウナギについてはすでに(ワシントン条約の)規制の対象になっています。次回、議題に乗れば、欧州などの議決権をもつ国が『保護指定』に回る可能性が高まりそうなので、議題にのるようなことになると、かなり厳しい状況になります」(水産庁)という。
加えて、国内でも環境省が2013年2月1日に、ニホンウナギを絶滅危惧種のリスト(レッドリスト)に指定した。「過去10年間あるいは3世代のどちらか長い期間において、少なくとも50%以上は成熟個体が減少していると推定される」との基準(絶滅危惧種IB類)にあたり、ニホンウナギはアマミノクロウサギやライチョウ、イヌワシなどと同じランクに位置付けられている。
シラスウナギも激減しているが、天然ウナギである親ウナギも、45年前から90%近く減っていることから指定されたのだが、水産庁は「国内でレッドリスト入りしては、さすがに反論しづらいですね」と漏らす。
もちろん、ワシントン条約で絶滅危惧種に指定されれば、ニホンウナギ(稚魚)の輸入は禁止されるので、国内に約400ある養殖業者は軒並み廃業せざるを得なくなる。ウナギ店も大ピンチだ。
ウナギは本当に食べられなくなるのか 正念場は3年後のワシントン条約改定 : J-CASTニュース
ナショナルジオグラフィックの記事もどうぞ。
第4回 さらに深まるウナギの危機 歯止めかからぬ資源減少 | ナショナル ジオグラフィック(NATIONAL GEOGRAPHIC) 日本版公式サイト