東京都の「自転車の安全で適正な利用を促進するための条例」案が公表された。ブレーキの無いいわゆるピスト規制が話題になっているが実際には事業所に駐輪所の確保を求めるなど自転車通勤者が多い原宿民にも大きな影響がある。
現在パブリックコメントを募集しているので関心のある人は是非意見を送ってほしい。
まずこの自転車の安全利用のための条例の経緯として都の有識者会議が昨年、突っ込みどころの多いナンバープレート制を提言して話題になっていた(規制案では見送り)。今回の条例案では事業者に駐輪場設置義務(違反者は公表)など利用者側の負担が大きい内容となっている。
担当している東京都青少年・治安対策本部は表現規制で批判されることが多い「東京都青少年の健全な育成に関する条例(いわゆる都条例)」の部署。交通安全課長の黒川氏は福岡県警組織犯罪対策課長、元警察庁刑事局組織犯罪対策部企画分析課長、ということで暴力団対策の共著も出している強面である。
自転車ナンバープレートが義務化? | web R25
東京都が今年5月に設置した有識者会議「東京都自転車対策懇談会」において、都内における自転車へのナンバープレート装着義務化が提言された。
「現在、都内には約900万台の自転車があると言われていますが、迷惑運転や放置車両に対して根本的な対策がとれていないのが実情。ナンバープレート制度はあくまでも検討段階ですが、制度設計次第で効果があると認識しています」
とは、東京都青少年・治安対策本部交通安全課長の黒川浩一氏だ。
http://r25.yahoo.co.jp/fushigi/rxr_detail/?id=20121101-00026645-r25(2012年11月の記事)
自転車の安全利用のための条例案の概要
提言内容の原文はこちら。
1.都に関する規定、2.自転車利用者に対する規定、3.事業者に関する規定、4.自転車使用事業者に関する規定、5.自転車関連事業者に関する規定、6.その他の者に関する規定、7.自転車関連事業の任意の登録制度の導入、となっている。
用語的には事業者=自転車通勤をする従業者がいる事業者、自転車使用事業者=メッセンジャー事業者、自転車関連事業者=自転車及び部品の販売業者、という感じだろう。
まず「1.都に関する規定」には何も書かれていない。「計画を策定し、公表する」「指針を作成し公表する」「必要な処置を講じる」。ということで具体的な内用は無い。
「2.自転車利用者に対する規定」から「都の施策に積極的に協力する」という文言が登場する。これ、入れる意味あるんでしょうか。条例に入れたら積極的に協力しなきゃいけないんでしょうか。
「3.事業者に関する規定」では事業者に駐輪場確保を義務付ける項目が出てくる。
(2) 自転車の駐車需要を生じさせる事業者は、その需要を満たす駐輪場所の確保、又は、顧客、従業員等に対する駐輪場所の案内等に努める。
(3) 自転車通勤をする従業者のための駐輪場所の確保、又は、その従業者が駐輪場所を確保していることの確認をしなければならない。(違反事業者の勧告・公表あり)
「4.自転車使用事業者に関する規定」では「都の施策に積極的に協力する」がまた出てくる。
「5.自転車関連事業者に関する規定」では「都の施策に積極的に協力する」がまた出てくる。ピスト規制はこれ。実際は原宿では既に廃れているから意味は無い。既に取締が行われており既存法規で対応可能だと思う。また自作PCのようにパーツ買いの場合はどうするのかなど煮詰まっていないようだ。
(4) 自転車小売業者は、ブレーキを備えていない自転車等、その利用が道路交通法等に違反するものを販売してはならない。(違反事業者の勧告・公表あり)
(例えば、競技用自転車でブレーキを備えていないものであっても、競技場で利用し、道路で利用しないものであれば、そもそも法令に違反しないので、こうした自転車は、販売禁止の対象外です。しかし、顧客から公道で利用すると聞いていたなど、法令に違反することを知った上で販売することは禁止されます。)
「6.その他の者に関する規定」では「都民は、都の施策に積極的に協力するよう努める。 」がまたまた登場する。「都の政策に積極的に協力」というのはまあ白紙委任しろ、ということなのでありえないわ〜という感じ。
「7.自転車関連事業の任意の登録制度の導入」は特にコメント無し。
都の義務少なく利用者・事業者の負担だけ増える
今回の条例案については下記コメントに全面的に同意。ブレーキが無いピストは死にたがりとしか思えないから違反事業者の勧告・公表、ではなく禁止が妥当。一方原宿や渋谷の雑居ビルの事業所はじゃあ駐輪場を確保しろと言われても不動産側に駐輪場が無いから店頭やガードレールに停めている訳で、都の事業で駐輪場を整備するといった方針も示さずに義務だけ課すということは実質的な自転車通勤禁止であろう。
それで、解決するんですか?
安全提供が前提−−NPO法人「自転車活用推進研究会」の小林成基理事長(63)の話
都が自転車の安全利用に関心を持つ姿勢は評価できるが、「都が安全に走れる環境を提供する」との前提を明示すべきだ。自転車の販売については「安全基準を満たしたものしか売ってはいけない」と踏み込んでほしい。自転車通勤については、事業者に負担を求めるだけで支援策を取らないと、自転車通勤が禁止されかねない。
http://mainichi.jp/feature/news/20130112ddm012040033000c.html
自転車関連では毎日新聞が 「銀輪の死角 – 毎日jp(毎日新聞) 」ということで継続的に自転車問題を取り上げて良い仕事をされているので関心がある方にはおすすめ。